私は電話のベル音が苦手です。父の事業の関係で山形の実家には借金があり、幼い頃から督促の電話がかかってくるからです。社会に出てからは連帯保証人になった為、今度は勤務先にまでも督促は追いかけてきました。これらがトラウマとなり、自然と実家から足が遠のいて行きました。
私は温かな家庭を求め30歳の時に結婚しました。ところがそんな幸せもつかの間、最愛の妻は息子が3歳の時に病気で亡くなってしまいました。妻の体が滅びても私たち三人の家族愛は永遠に生き続ける、そんな思いを込め妻の墓石に自らの手で「永遠」と刻印を刻みました。泣いても泣いても泣き足らず、私はまるで一生分の涙を流しながらも男手ひとつで必死に息子を育てました。
息子が小学校3年生になった時、ひとりぼっちの子育てに限界を感じた私は息子の為に見合いをしました。見合いの相手はとても美しく、これまで頑張ってきたご褒美に亡き妻が連れてきてくれたのだと思いました。美しい女性は見合いの席にも拘わらず、一生懸命任意売却の話ばかりしていました。一抹の不安を感じながらも仕方なく話を聞いているうち、任意売却を依頼されるお客様とその家族にこれまで封印してきた記憶を重ねていました。幼い頃に電話が鳴った時のあの凍り付く感覚、「父は出かけています。」と電話の向こうへ嘘をついてしまう罪悪感…。
亡き妻には何もしてあげられなかったので、次に家族になる人にはどんな想いも叶えてあげようと決めていました。初めて会った見合いの席で、目の前にいるこの上なく美しい女性に夢は何かと聞いたところ「任意売却に携わりたい。」と言いました。私はその為の協力なら何でもすると答えました。
新年あけましておめでとうございます。皆様に助けられ、おかげさまで株式会社伊藤宅建事務所は設立3年目に突入しました。任意売却は非常に過酷な業務ですが、私が協力することで新たな一歩を踏み出せる人がたくさんいることを昨年は特に感じた一年でした。
これをご覧になっている相談されたい方へ私からお願いがあります。電話をかけることは非常に勇気のいることだと思います。勇気を出して下さいとは言いませんが私だってこの程度の男です。でも悲しみのどん底の、底の底を強く蹴り上げ這い上がりました。是非あなたの抱えている心の闇を、気を楽にして当社担当へ聞かせてあげて下さい。ご縁があったなら、あなたが這い上がるための協力をさせていただきます。本年も当社担当が不動産業務の枠を超え、お客様の心に寄り添って参ります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
代表取締役 伊藤一美(代筆:担当営業)